当記事では、公務員の副業を解禁するときに考えるべきことを具体的に考えていきたいと思います。
※個人の考えが全面的に押し出されている内容ですので、真に受けすぎないようお気をつけください。
副業の位置付け
公務員の副業を解禁しようとする際、「副業」をどのように位置付けるかは重要な観点です。
新しい働きかたとしての副業
公務員の副業解禁の流れを調べてみると、「副業解禁」はぜんぜん進んでいないことがわかります。
先進的な自治体でも、現段階で制限されていない報酬を得る行為の整理をしている段階にあるようです。もちろん、まだまだ取りかかっていない自治体も多いですが。
そしてまた、公務員の副業解禁について考えるとどうしても公益性のある活動という観点からは逃れられないようです。
公務員の副業解禁を考えるとき、その目的やあり方についてはいま一度よく考え直さなければなりません。
これまで何度も確認してきていますが、副業の解禁は「働きかた改革」の一環で働きかたの多様化という考え方によって進められている動きであり、個々人が各々のスタイルで働くということを推奨しています。
公務員の副業を解禁するためには、職員それぞれが自分にあったスタイルで働けるような体制を用意することが必要です。
そのためには、現在のような「これとこれとこれはしてもよい」というような制限のしかたではなく、改めて禁止事項をまとめていかなければなりません。
また副業の解禁と同時進行で、フレックスタイム制やテレワークを導入するなど、これまでの形式にとらわれない働きかたができるよう考えていく必要もあります。
公務員として様々な働きかたができるようになるには、やらなければならないことは多そうです。
禁止事項の考えかたについては、次の章で考えていきましょう。
活動する目的
副業の目的はスキルアップや勉強、地域貢献、収入を増やすなど、これも人それぞれです。
副業は職員が各々自分のために行う活動なので、公務員だからと言って、副業解禁を考えるときに自治体のメリットが優先されるのは筋が違います。
副業といっても様々な種類があり、それぞれの目的があって始めることにはなりますが、その性質上どれも共通して稼ぎを得ることが目的のひとつとなります。
また、何かひとつのことが目的となるわけではなく、稼ぎをどの程度の割合で求めるのかも各々なのです。
日本では稼ぐことはがめついというネガティブな考え方が一般的で、現在許されている公務員の副業でも金額によって制限がありますが、僕は副業による金額の制限にはあまり意味がありません。
もちろん、違法な事業や詐欺まがいな事業は避けるべきではありますが、誰かのためになる事業をしたときに正当な報酬を受け取ることは大切なことです。公務員にはこの感覚が欠けていることが多いので、この感覚を勉強するためにも、公務員も何か事業をするべきだなって思います。
何か事業を成功させて多くの利益を得ることができたのであれば、地域に還元する方法は自分で考えればよいのです。
例えば大きく稼いだとして、自費でサイクリングコースの看板を設置したり野外映画祭を開催したり、何か施設(ドッグランとかキャンプ場とか)を運営したりすればよいのです。自分の活動が地域おこしにもなるなんてかなり夢がありますよね。
副業と兼業
どれだけ稼いだのかは、本人がどれだけ活動したかという結果なので、公務員だからと制限する必要はありません。
むしろ副業で多く稼いだ職員がいるのであれば、副業のモデルケースとして周知するべきだと思います。
さて、公務員にも様々な種類があるので一概には言えませんが、例えば自治体職員の場合は1日7時間(朝8時頃から5時半頃まで/休憩1時間)、週5日という働きかたが一般的です。
副業をするのであれば、これ以外で時間を決めて作業する必要があります。
作業時間を増やす工夫をするとなると、定時帰宅と有給休暇の取得は必須です。現在の多様ではない働きかたでは、この2つを心がけることでプライベートの時間を増やし、プライベートの時間をうまくやりくりして作業の時間を捻出する必要があるのです。
副業をしない職員と同様の条件で職務に臨むのであれば、自分の事業であっても「副業」の域を出ません。
兼業職員となるには、週休3日以上であったり1日の勤務時間を減らしたりという働きかたができるようになってくる必要があるのではないかと思います。もちろん、給料の算出方法も考え直さなければなりませんね。
ゆくゆくは、公務員をしながらも事業主・経営者になるという働きかたができるようになって欲しいものです。
制限すること
僕は公務員だとしても、副業は個人的な活動であるべきと主張してはいますが、制限がなくてよいと考えているわけではありません。
制限は必要です。この制限は公務員だからというわけではなく、民間の企業にも共通するものであり、雇用されながら副業をする際に守るべきルールと言えます。
公務員の副業に関する法律
国家公務員法、地方公務員法に記されている副業に関する条文は、やはり無視できません。
信頼性の保持
まずは国家公務員法第99条、地方公務員法第33条で規定されている「信用失墜行為の禁止」です。
副業はもともとよくないものとされてきました。そのため副業にはバレないようにするものというイメージがあり、「副業」と呼ばれるものの中には、違法行為や詐欺まがいな手法がいくつもあります。
そのため公務員の立場で副業を始めようとするのであれば、そのようなものに手を出さないようしっかりと勉強していかなければなりません。
また、副業をしたら職務が疎かになるというイメージは公務員の副業解禁への大きな妨げとなるでしょう。
そのため公務員の副業を許可するということは、その職員は職務をまっとうしていると認めることになります。
副業をするためには、公務員としての職務をまっとうしていると示す、もしくは信頼に足る実績を出す必要があるのかもしれません。
職務専念の義務
国家公務員法第101条、地方公務員法第35条で規定されている「職務専念の義務」も重要な観点です。
公務員に限らず、雇われて働いている身であれば就業時間は職務に専念する義務があります。当然です。
公務員の職務には災害対策や選挙事務などで、通常の就業時間以外に出務することが含まれます。
また若手職員の場合、イベントのスタッフとして駆り出されるなど、自分の思い通りに予定を決めることが難しい場合があります。
そのため、公務員の立場で副業をするのであれば、臨機応変に取り組めるものを選び、余裕を持ったスケジュール管理を行う必要があるのです。
守秘義務の遵守
国家公務員法第100条、地方公務員法第34条で規定されている「守秘義務」も無視することはできません。
公務員の職務を遂行する中で知る情報の中には、個人情報や公開前の公募情報など、公の場に出してはいけない情報はたくさんあります。
元々、守秘義務が公務員の副業を妨げる要因となっていたのは、副業が異なる組織に属することになるものであるという認識があり、別の組織で活動することで公務員としての職務で知り得た情報が利用されることを防ぐためにあったものだと考えられます。
しかし現代では組織に属さない副業も多くあり、むしろそのような副業が推奨されています。そんな現代の副業には活動しながらの情報発信が不可欠でありますが、その中で情報が漏れることを気をつける必要はありそうです。
全体の奉仕者として
国家公務員法第15条、第96条、地方公務員法第30条で規定されている「全体の奉仕者」という考えかたは、副業解禁を議論する上で重要な観点と認めざるを得ません。
全体の奉仕者たる公務員が個人の利益を求めてもよいのか。
これは難しい議題のようですが、この解決はいたってシンプルだと僕は考えます。
全体の奉仕者として勤務し、職務の遂行に専念する。そこにプライベートのことは記載されていません。
公務員だとしても副業は個人の活動です。自分のためになる個人的な活動は、やる気があるのなら積極的に行うべきです。
また公務員は住民の手本になるべきだとは思いますが、それならむしろ、公務員も副業を始めて新しい働きかたのモデルとなるべきです。
「報酬を得る行為」について
国家公務員法第103条・第104条と地方公務員法第38条には「報酬を得る行為の禁止」について記載されています。
そこでは営利企業で役員をしたり従事したり、そして自分の事業を営むことが禁止されていますが、この条文については社会情勢にそぐわないと言えると思うので、法律の方を考え直さなければなりません。
法律が改定されるまでは、任命権者の許可を得ることで副業を始める必要があります。
自治体との利害関係
副業を行うとして、自分の働く自治体と利害関係を持つことは気をつけなければなりません。
自治体、特に自分の所属する部署と関わりのある事業は避ける必要があります。職務によって得た情報を自分の利益に利用してはなりません。
個人としても、動画編集やポスターの作成などで仕事を受けるなど、できることは多いと思いますが、いろいろと気をつけるべきでしょう。
まとめ
公務員の副業解禁を推進しようという流れがあるとはいえ、気をつけるべきことは多いですね。
しかし気をつけるべきと思われることは、これまでも言われている公務員倫理とあまり変わらないような気がします。
ただし、副業を解禁する目的や副業の位置付けはしっかりとしておく必要がありそうです。
なんにせよ副業をしようとする職員は、本業である公務員としての職務をかっちりと遂行し、文句をつけられるような隙を見せないように意識を高く持っておく必要がある気がします。
そんな職員が増えれば自治体も活気が出てくるでしょう。そんな考えかたができるようになるといいなと思います。