公務員の副業解禁の事例と傾向

公務員の副業解禁が話題になってから2年以上が経過していますが、なかなか広まりませんね。

公務員の副業解禁はどこでどのように進められているのでしょうか。

自治体が何か制度を取り入れるには前例が必要なため、先進的に取り組む自治体が現れないことには、なかなか全国に浸透しません。

公務員の副業・兼業については話題にはなるものの、もともと法律によって規制されていたことを解き放つ必要があるので、なかなか取り組みにくい問題です。

当記事では公務員の副業解禁について、事例と傾向を見ていきます。

目次

自治体により副業が認められた事例

まず、公務員の副業解禁の事例としてよく取り上げられる代表的な3つの自治体を紹介します。

兵庫県神戸市

兵庫県神戸市は、職員の副業を推進する制度を制定した一番はじめの自治体です。

地域団体やNPO団体が高齢化に伴って担い手不足が進む中、市の職員が市民の立場で地域における課題解決に積極的に取り組むことを目的としたこの制度は、地域貢献応援制度と名付けられ、平成29年4月に「営利企業への従事等の許可」の一環として導入されました。

制度の対象とされたのは在職6ヶ月以上の一般職の職員が行う、公益性の高い継続的な地域貢献活動や地域の発展や活性化に寄与する活動です。活動地域は神戸市内外は問われません。

活動には審査があり、勤務成績が良好であること、活動は勤務時間外に行うこと、今日できる範囲の報酬であること、過去5年間に活動する団体と関係のある職に就いていないこと、営利を主目的とした活動ではないことなどが要件です。

活動をするためには事前に兼業許可をとる必要があり、活動開始予定日の1ヶ月前までに所属長の承認を得て、人事課に許可申請書に活動計画書を添えて提出しなくてはなりません。

【許可申請書の記載内容】
・活動の概要、目的、効果
・活動で活かしたい知識、経験
・所属する団体名
・団体の概要
・団体での役割
・活動の日時、活動場所、報酬年額

兼業許可を得て活動を始めた職員は、毎年2月末日までに実績報告書を提出する必要があります。実績報告の内容によって許可基準を満たさないと判断された場合は、次年度の活動を許可しない場合もあるようです。

【実績報告書の記入内容】
・活動実績
・報酬額(3月分は見込みで記載する)
・次年度の活動計画

奈良県生駒市

奈良県生駒市も副業を解禁した自治体として取り上げられます。

生駒市では、公務員という職業柄から報酬等の受け取りへの抵抗が、NPO活動や子どもたちへのスポーツ指導などの地域活動への参加を妨げる一因となっていたようです。

そこで職員が地域活動に励み市民との参画や協働によるまちづくりがより一層活発になることを目指し、平成29年8月に職員が職務外に報酬を得て地域活動に従事する際の基準(運用)を定めました。

対象となるのは在職1年以上の一般職で、目標達成評価前2回、職務行動評価全1回が共にB以上だった職員が行う、公益性が高く、継続的に行う市内外の地域の発展や活性化に寄与する地域貢献活動であることが条件となっています。

生駒市でも活動前に「様式1 営利企業等従事許可申請書(兼変更許可・許可取下申請書)」と「様式2 活動実績・計画報告書」を人事課長へ提出することで申請する必要があります。

許可にあたっての審査基準は以下の通り。

【審査基準】
・勤務時間外、週休日及び休日の活動であり、職務の遂行に支障をきたすおそれがないこと。
・信用失墜行為の発生の恐れがないこと。
・活動先の団体等と特別な利害関係が生じるおそれがなく、かつ特定の利益に偏することがなく、職務の後世の確保を損なうおそれがないこと。
・報酬は、地域貢献活動として許容できる範囲であること。
・市内外の地域の発展、活性化に寄与する活動であること。
・営利を主目的とした活動、宗教的活動、政治的活動、法令に反する活動でないこと。

生駒市でも毎年度2月末までに様式2により活動報告をする必要があります。また、許可期間の変更・延長・中止・取消などをする際は、様式1の申請書を提出する必要があり、しっかりと管理されています。

【実績報告書の記入内容】
・活動実績 ・報酬額
・活動の成果(地域貢献の観点で)
・次年度の活動計画(内容、報酬額、見込まれる成果)
・活動に伴う職務の遂行への支障、公正の確保、品位の確保

奈良県生駒市『地域貢献活動を行う職員の営利企業等の従事制限の運用について』

宮崎県新富町

宮崎県の新富町では、2018年に職員の就業内規で副業を認めるように見直されました。

新富町における副業解禁は、人口減や少子高齢化によって地域活動が薄くなってしまったなかで、町の職員が自ら地域に飛び出して官民共同で地域の課題に取り組むという意味があったようです。

農家の手伝いや高齢者の買い物代行、行事の支援などが想定された取り組みですが、「地域になくては困る存在」であるコンビニのアルバイトも認められているといいます。

西日本新聞【地域の針路】公務員「副業」人手補う 農家手伝い、神楽舞い手、部活コーチ

公務員の副業に関する調査研究

さて、公務員の副業について調査・分析したものがないか調べてみたら、いいものがありました。

公益財団法人東京市町村自治調査会が行った調査の報告書『公務員の副業・兼業に関する調査研究 〜職員のスキルアップ、人材戦略、知己貢献の好循環を目指して〜』が、なかなかよく研究されていますのでご紹介します。

この調査では、公務員の副業・兼業が「地域の担い手不足」と「自治体における人材育成」を同時に解決できる可能性に着目して、職員・行政・地域それぞれの側面から分析・検討されています。

副業・兼業の現状と課題、副業・兼業の事例分析、副業・兼業に関する人事担当者や職員の認識調査など、副業・兼業に関する気になるところが網羅されていました。

公務員の副業・兼業のあり方

報告書のなかから公務員の副業・兼業を推奨する目的という観点で、公務員の副業・兼業について考えていきましょう。

地域貢献活動(公益的活動)として

現状では主に、郊外部の自治体における副業・兼業は、地域貢献活動を目的にするなら許可すると考えられることが多く、地域の発展や活性化を狙っているため活動エリアは自地域内に限定されます。

NPO団体の職員としての活動であったり、スポーツのコーチであったり。公益な活動なのに報酬が発生するからすることを躊躇してしまうような雰囲気をなくすために基準を作っているという風潮があります。

職員のスキルアップとして

都市部の副業・兼業は、職員のスキルアップの場として認識されることが多いようです。この場合は活動エリアも限定されず、個人の成長や意欲向上を重視される傾向にあります。

職員が業務外で活動することにより、経験を積むというものです。活動することにより知識や人脈が増えることも期待されています。

公務員の副業・兼業を考える上でのポイント

公務員の副業・兼業が期待され、推奨していこうとするとして、守秘義務や職務専念など規制するべきことは少なくありません。

位置付け

「副業・兼業」の捉え方と運用について、取りまとめる担当課と活動する職員との間で認識のズレが生じることが考えられます。そのため、制度や基準を明確にしておくことは必須です。

そのなかで何より、副業・兼業は業務外活動であることを明確にする必要があります。

またさらに、制度として「認められる業務外活動」や「有償での活動が認められる業務外活動」の範囲と基準を明確にすることも重要です。

促進に向けて

働きかた改革による働きかたの多様化に向けた意識の広がりや、ニーズが高まってきている中で、未だ前例の少ない制度や基準を試行錯誤しながら作っていく必要があります。

試行錯誤は必須です。ある程度は失敗しながら、基準を作り上げる必要があるのです。

さらに、制度の認知や活用を広げる創意工夫も必要です。思考停止は許されません。

また繰り返しになりますが、副業・兼業は業務外活動であることが重要です。副業・兼業はひとりの住民としての活動をするものであるべきです。

そのため人事評価には直結させることなく、人材戦略の一環として副業・兼業を促進することを検討する必要があります。

公務員の副業・兼業が生み出す好循環

公務員の副業・兼業は、職員のスキルアップを軸にしながらも、地域における担い手不足の解消によって地域貢献をも果たしうる「一挙両得」の仕組みとして制度化される傾向にあります。

副業・兼業が認められることにより職員の働きかたが多様化し、役所が職場としての魅力が向上することで、採用活動の強みになり、人材の流出も防げるため、「職員」「行政」「地域」の中で好循環が生まれるのです。

公務員が副業・兼業を推奨することで得られるメリットは、自治体で働く職員個人が受けるものだけではありません。個人で活動する職員がいることで、たとえそれが個人的な活動だとしても、地域には何らかの影響があるはずです。

積極的に何か活動したい職員を規制する制度は、規制改革でぶっ壊してしまいたいですね。

【参考】東京市町村自治調査会

公務員の副業・兼業に関する調査研究〜職員のスキルアップ、人材戦略、地域貢献の好循環を目指して〜

まとめ

現在推し進められている公務員の副業・兼業について調べてみると、その実態は公益性の高い有償で行う業務外活動の基準を明確にしただけであるということがわかりました。

実際、僕の働いている自治体では副業の基準をはっきりさせるような動きはありませんが、消防団やスポーツのコーチなどで報酬をもらって活動している職員は多くいます。斯くいう僕も消防団や吹奏楽部の指導、さらに音楽隊活動で報酬をもらっています。(合計しても年間10万円に届きませんが。)

しかし副業解禁のそもそもの狙いである「働きかた改革」や、そもそも「副業」って何なのかという観点で考えれば、公益性の高い有償で行う業務外活動の基準を明確にすることはマイナスからゼロに戻しただけであり、何の進展もないことがわかるはずです。

うーん、何だかな。

これは誰かで基準を作り直す必要がありますね。

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